都銀が本気でリーテルに取り組まなかった理由をご存知でしょうか?

都市銀行は1,000万単位の口座数を誇る巨大金融機関で、

個人口座数も膨大な数に上ります。

しかし、個人(リテール)業務に対しては、

これまでは積極的に取り組んできたとは言えませんでした。

 

都市銀行は、わが国の金融機関を常にリードする巨大金融機関です。

長引く不況で企業に対する融資が減少した現在では、ディーゼル業務に

軸足を置いた戦略を展開していますが、都銀はこれまで個人(リーテル)業務に

対して熱心に取り組んできませんでした。それはなぜなのでしょうか?

 

それは都銀の事業戦略が法人第一主義だったからです。

行員は誰しもが名だたる大企業の営業担当に憧れて入行してきます。都銀や

信託など大手銀行の本部組織には「営業第一部」といった、業種別の

営業セクションがあります。彼らはこうした営業部門を「ナンバー部」と呼んで、

銀行に最も高い収益をもたらす部署に配属されることを目指すのです。

 

「大企業の営業担当にならなければ、銀行に入った意味がない」

大手銀行の大企業優先意識は、行員の間に深く浸透していました。

 

【法人第一主義と収益効率】

都銀の事業戦略は大企業中心の法人第一主義であり、都市部を中心に

営業活動を展開しています。大企業は巨額の設備投資が必要なため、

銀行から多額の融資を受ける上に、売上高も高いので預金も巨額になります。

 

何万人という従業員お抱え、多くの関連会社や取引先企業が連なっています。

その収益効率は個人取引と比較にはなりません。

 

法人取引に比べて個人取引は、人海戦術に頼らざるを得ません。

それに膨大な口座数ですから、個人取引はどうしても効率の悪い仕事なのです。

都銀はシステム化によって個人取引に対応しました。例えばATMを増設して

大量の個人取引を処理し、なるべく人件費をかけないで利用者を引き止めるよう

にしました。

 

その代表例が住宅ローンなのです。住宅ローンは国の政策として、

持ち家促進のために登場した金融商品なのです。しかし都銀は非効率で利益が

期待できない、しかもリスクの高い長期個人融資の取り扱いに消極的でした。

そのため、国は大手銀行に出資をさせて住宅金融専門会社住専)を設立させて

対応をしました。

 

ところが、予想外に住宅ローンが急成長したのを見て、今度は積極的に販売を

し始めたのです。今では消費者金融と手を組むようになった消費者ローンも、

都銀は1時販売したのですが、やはり尻つぼみになり終わりました。

これはいずれも80年代前半なことになります。

 

都銀各行は、関連子会社としてクレジットカード会社を設立しました。

しかも、他の都銀と共同で出資したカード会社も設立すると言う、ややこしい構図

お創りあげたのです。クレジットカード業務に対する取り組みの迷いが現れています。